嶋田病院指標
2022年度 嶋田病院 病院情報の公表
当院の特性について知って頂くため、DPCデータから全国統一の定義に基づいた指標を公開しています。
対象は2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日)に当院を退院された患者さんです。
24時間以内の死亡、事故、労災等の方は含まれていません。
※-(ハイフン)は10症例未満
- 年齢階級別退院患者数
- 診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
- 初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
- 成人市中肺炎の重症度別患者数等
- 脳梗塞のICD10別患者数等
- 診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
- その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)
年齢階級別退院患者数
年齢区分 | 0~ | 10~ | 20~ | 30~ | 40~ | 50~ | 60~ | 70~ | 80~ | 90~ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
患者数 | - | 20 | 48 | 53 | 93 | 167 | 309 | 671 | 917 | 540 |
2022年4月1日~2023年3月31日の間に当院を退院した患者さんの、入院時点の年齢を10歳刻みで集計しています。
入院患者の平均年齢は76.2歳で、70歳以上の方が全体の75.5%です。
産婦人科、小児科を有していないこともあり、もともと0~40代の患者さんは少ない傾向にあります。
当院は救急に力を入れており、脳梗塞や緊急内視鏡、緊急手術が必要な消化器疾患など緊急性の高い疾患に24時間365日対応しています。
救急科
救急車台数
脳梗塞の治療では、小郡・三井地区で唯一rt-PA(血栓溶解療法)しており、専門医による迅速な診断・治療が可能です。
脳卒中(脳梗塞)
緊急内視鏡や緊急手術が必要な患者さんに対応するため、消化器内科、消化器外科でも24時間365日オンコール体制を整えています。 医師、内視鏡室看護師、手術室看護師等が患者さんの、もしもの時に備えています。
消化器内科
消化器外科
住民の方々が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう 嶋田病院では急性期・回復期の医療提供だけでなく、在宅部門からの支援もあわせて地域包括ケアシステムの構築を目指しています。
在宅支援事業所一覧
診断群分類別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
消化器外科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 |
---|---|---|---|---|---|---|
060160x001xxxx | 鼠径ヘルニア(手術あり) | 43 | 2.2 | 4.6 | 0.0% | 71.7 |
060335xx02000x | 胆嚢炎等(手術あり) | 39 | 5.7 | 6.9 | 0.0% | 61.3 |
060150xx02xxxx | 虫垂炎(手術あり)虫垂周囲膿瘍を伴うもの | 14 | 7.6 | 9.8 | 0.0% | 47.5 |
060150xx03xxxx | 虫垂炎(手術あり)虫垂周囲膿瘍を伴わないもの | 11 | 4.7 | 5.3 | 0.0% | 39.6 |
060210xx99000x | ヘルニアの記載のない腸閉塞 | 10 | 6.6 | 9.0 | 0.0% | 71.3 |
消化器外科では、早期回復が期待できる腹腔鏡手術を標準治療としています。開腹手術に比べて患者さんの体の負担も少なく、術後の回復が早いのが最大の特徴です。
1位は腹腔鏡下でヘルニアを修復する症例で、2位も腹腔鏡下で胆のうを摘出する症例です。鼠径ヘルニアを放置してしまうと、腸の壊死や穿孔、腹膜炎まで進行し命に危険が及ぶ可能性があります。太ももの付け根(鼠径部)にふくらみがある、または痛む、違和感がある場合は早めに受診しましょう。急性胆のう炎の初期症状は、上腹部の不快感や鈍痛ですが炎症が強くなると右季肋部痛になり次第に激痛になります。 早期手術が推奨されておりますので、気になる症状がありましたらご相談ください。
他に悪性腫瘍(胃癌・大腸癌)の手術を2022年度は13件行っております。当院では、消化器外科医、麻酔科医、及び手術室スタッフのオンコール体制を整えております。診療時間内の緊急手術はもちろん、休日・時間外でも手術を必要とする患者さんに対応することが可能です。
上位5位すべての症例において、全国平均の平均在院日数より、短く、早期退院が当院の特徴の一つです。
消化器外科
血管外科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 |
---|---|---|---|---|---|---|
050180xx02xxxx | 静脈・リンパ管疾患(手術あり) | 23 | 2.0 | 2.7 | 0.0% | 66.2 |
080010xxxx0xxx | 膿皮症 | 10 | 10.9 | 13.5 | 20.0% | 72.9 |
110310xx99xxxx | 腎臓又は尿路の感染症 | - | - | 13.6 | - | - |
040081xx99x0xx | 誤嚥性肺炎 | - | - | 21.1 | - | - |
050161xx9900xx | 大動脈解離 | - | - | 16.5 | - | - |
血管外科では、下肢静脈瘤に対し手術を行った症例が1位です。下肢静脈瘤は、血管の病気の中では最も多いものです。日帰り手術を基本としており、2022年度は外来にて111件の下肢静脈瘤手術を実施していますが、遠方の方・高齢の方など希望に応じて1泊入院での手術も行っています。表内の23件は、入院して手術した方の件数であり、合計で134件の手術を行っております。麻酔科医師、専門看護師、検査技師などチーム体制を図り安心して手術を受けて頂けるように心がけています。脚の血管のボコボコやふくらはぎのだるさ、むくみ等が気になる方は、気軽にご相談ください。
血管外科
整形外科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 |
---|---|---|---|---|---|---|
160800xx01xxxx | 股関節・大腿近位の骨折(手術あり) | 116 | 51.9 | 26.4 | 16.4% | 84.6 |
160690xx99xxxx | 胸椎、腰椎以下骨折損傷(手術なし) | 31 | 36.2 | 20.1 | 29.0% | 83.9 |
160760xx97xx0x | 前腕の骨折(手術あり) | 27 | 3.4 | 4.9 | 3.7% | 78.1 |
160800xx99xxx0 | 股関節・大腿近位の骨折(手術なし) | 17 | 18.8 | 14.5 | 52.9% | 82.0 |
160980xx99x0xx | 骨盤損傷(手術なし) | 16 | 22.9 | 20.0 | 50.0% | 82.2 |
全国の平均在院日数と比較すると、入院期間が長くなっていますが、これは急性期一般病棟~回復期リハビリテーション病棟を含めた在院日数のためです。急性期一般病棟だけの場合、以下の日数となっています。
1位:股関節・大腿近位の骨折(手術あり) 20.4日
2位:胸椎、腰椎以下骨折損傷 8.6日
3位:前腕骨折(手術あり) 3.0日
4位:股関節・大腿近位の骨折(手術なし) 7.9日
5位:骨盤損傷 10.6日
整形外科では、大腿骨近位部骨折(大腿骨頚部骨折、大腿骨転子部骨折)に対して手術を行った症例が1位です。2番目に多いのは胸椎や腰椎の椎体骨折に対して保存的加療を行った症例です。大腿骨近位部骨折では、手術を含めて急性期治療を平均20.4日行い、その後は回復期リハビリテーション病棟に転棟します。回復期リハビリテーション病棟とは、ADL(日常生活動作)の向上による寝たきりの防止と家庭復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に行うための病棟です。
整形外科
入院におけるリハビリテーション
脳神経内科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 |
---|---|---|---|---|---|---|
010060x2990401 | 脳梗塞(脳卒中発症3日目以内、かつ、JCS10未満) | 63 | 32.3 | 16.0 | 4.8% | 75.3 |
030400xx99xxxx | 前庭機能障害(めまい症) | 35 | 4.2 | 4.8 | 0.0% | 65.9 |
160100xx99x00x | 頭蓋・頭蓋内損傷 | 31 | 10.5 | 8.5 | 16.1% | 73.1 |
010230xx99x00x | てんかん | 29 | 10.0 | 7.3 | 10.3% | 60.6 |
010160xx99x00x | パーキンソン病 | 20 | 18.1 | 18.6 | 20.0% | 74.9 |
脳神経内科の主な疾患は、脳梗塞です。1位の脳梗塞は、エダラボンという脳を保護する薬剤を使用した治療を行った患者数です。エダラボンは脳梗塞発症後24時間以内に投与が必要で、投与が早ければ早いほど脳の障害を最小限に抑えることができます。平均在院日数を全国と比較すると、32.3日と長くなっていますが、これは急性期病棟~回復期病棟を含めた在院日数のためで、急性期病棟の平均在院日数は15.5日となっています。
発症早期からリハビリ介入を行いますが、治療後は速やかに回復期リハビリテーション病棟に移り、集中的にリハビリを行います。また、当院ではrt-PA(血液溶解療法)の施行が可能で、24時間(どの時間帯でも)脳梗塞の診断・治療ができる態勢を整えています。脳梗塞発症から4.5時間以内にしか行うことができない治療ですが、適応の方には速やかに治療を開始ししています。
脳梗塞すべての症例を合わせると年間214件で、うち70.6%は小郡市・大刀洗町の患者さん、29.4%は久留米市、筑紫野市、筑前町など市外の患者さんです。当該地域の患者さんをカバーするだけでなく、広域から脳梗塞の患者さんを受け入れています。
脳神経内科
入院におけるリハビリテーション
糖尿病内科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 |
---|---|---|---|---|---|---|
10007xxxxxx1xx | 2型糖尿病(インスリンあり) | 52 | 12.4 | 14.3 | 1.9% | 70.2 |
110310xx99xxxx | 腎臓又は尿路の感染症 | 30 | 13.5 | 13.6 | 13.3% | 85.3 |
040081xx99x0xx | 誤嚥性肺炎 | 28 | 17.5 | 21.1 | 21.4% | 85.6 |
050130xx9900x0 | 心不全 | - | - | 17.5 | - | - |
10007xxxxxx0xx | 2型糖尿病(インスリンなし) | - | - | 10.8 | - | - |
糖尿病内科では、2型糖尿病の患者さんを主に診療しています。2型糖尿病は、日頃外来通院している患者さんの血糖コントロールがうまくいかなくなった場合に教育入院を行ったり、手術前の患者さんの血糖値コントロールを目的とした入院を行ったりしています。食事指導、インスリン手技指導、糖尿病教室への参加等により、普段の生活でうまく糖尿病と付き合っていけるようにお手伝いしています。
嶋田病院は、当地域の糖尿病患者さんの合併症をゼロにすることを目指し活動しています。その一環として、「糖尿病プロジェクトチーム」の医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・理学療法士・事務職員が連携し、多職種から糖尿病治療にアプローチできる態勢を整えています。
また、地域のかかりつけの診療所とも連携しながら糖尿病の治療を行う「糖尿病連携パス」を運用しています。
糖尿病は進行すると人工透析での治療が必要になるリスクが高くなりますが、小郡市は75才以上で人工透析を受けている割合が県内の市の中で現在一番少ない市となっております。(福岡県 7.71人/千人、小郡市 4.24人/千人 2023年3月時点)
その他、糖尿病内科では、尿路感染症等の診療も行っています。糖尿病に合併する感染症の中で、最も頻度が高いのが尿路感染症であり、
重症化しやすいのが特徴です。重症化しないように適切な抗生物質を使用し、速やかに血糖コントロールを行って、早期退院を目指しています。
糖尿病内科
糖尿病教室
消化器内科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 | 患者用パス |
---|---|---|---|---|---|---|---|
060340xx03x00x | 胆管(肝内外)結石、胆管炎(手術あり) | 53 | 4.3 | 8.9 | 1.9% | 77.9 | |
060020xx04xxxx | 胃の悪性腫瘍(手術あり) | 27 | 6.0 | 7.8 | 0.0% | 71.4 | |
060102xx99xxxx | 穿孔又は膿瘍を伴わない憩室性疾患 | 25 | 5.6 | 7.6 | 0.0% | 61.9 | |
060190xx99x0xx | 虚血性腸炎 | 21 | 5.9 | 8.8 | 0.0% | 77.3 | |
060210xx99000x | ヘルニアの記載のない腸閉塞 | 20 | 5.3 | 9.0 | 0.0% | 71.4 |
消化器内科では、地域内での消化器疾患の完結を目指しており、抗生剤や輸液などの基本的な治療から、高度の技術を必要とする消化管癌
に対する内視鏡治療(EMR/ESD)や胆管炎に対する内視鏡治療(ERCP)など幅広い範囲の消化器疾患に対する診療を行っています。
1位は胆管結石・胆管炎に対する内視鏡でつまりを解除する手術(結石除去やステント留置)。2位は、胃癌を内視鏡的に切除する症例です。
当院の内視鏡センターでは消化管癌の早期発見と治療に特に力を入れており、4つの検査室(一つは透視室兼)、広い待合室とリカバリー室を
有し専門的な診療を実施できる体制の下、年間8,500件を越える内視鏡(うち約1,000件は治療内視鏡)を行っております。
2022年度には食道7件、胃51件、大腸60件と多数の癌が当院の内視鏡センターで発見されており、その内の約7割が早期癌でした。消化管癌は早期に発見できれば内視鏡による根治が期待でき、目に見える傷跡も残さず、機能低下を起こすことも少ないため、当院では消化管癌に対する内視鏡治療を積極的に行っており、その件数も年々増加してきております。
また、当院は消化器内視鏡学会の指導連携施設に認定されており、更に2023年度より消化器病学会の指導施設にも認定され、肝臓の専門医が赴任したため、より幅広い領域の疾患に高い専門性を以て治療が行える体制となりました。
消化器内科
内視鏡センター
循環器内科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 |
---|---|---|---|---|---|---|
050130xx9900x0 | 心不全 | 46 | 13.8 | 17.5 | 23.9% | 87.3 |
050050xx9910x0 | 狭心症、慢性虚血性心疾患(心カテあり) | 41 | 2.0 | 3.0 | 0.0% | 71.9 |
050050xx0200xx | 狭心症、慢性虚血性心疾患(冠動脈形成・ステント留置あり) | - | - | 4.3 | - | - |
050050xx9920x0 | 狭心症、慢性虚血性心疾患(心カテ+血管内超音波検査あり) | - | - | 3.2 | - | - |
050030xx97000x | 急性心筋梗塞(冠動脈ステント留置あり) | - | - | 11.6 | - | - |
循環器内科では、狭心症や心筋梗塞、心不全、不整脈、肺動脈塞栓血栓症、急性大動脈解離、下肢閉塞性動脈硬化症など様々な循環器疾患(心臓・血管の疾患)に対して診療を行っております。
1位の心不全での入院に対しては、 「心不全診療パス」を導入し、検査・治療内容はどの時間帯でも・どの医療スタッフが担当したとしても診療の質を落とさず均一化できるように治療にあたっています。また、心不全に至った原因を詳しく精査しております。当院独自の取り組みとして「心不全手帳」を患者さんにお渡ししています。疾患に関する知識や日常生活での注意点を患者さんにも情報共有していただくことで、心不全の再発防止につとめています。
今後、高齢化により心不全患者が急増していき、心不全の増悪を繰り返してしまうと推定されています。心不全の発症・重症化予防のための療養指導に従事する「心不全療養指導士」という認定制度が開始され、当院にも6名在籍しており、心不全患者さんへ最適な療養指導を行っております。また、心臓リハビリテーションにも力を入れており、「心臓リハビリテーション指導士」による最適なリハビリテーションを行っております。
2~5位は狭心症や心筋梗塞に対する心臓カテーテル検査と治療です。心臓カテーテル検査は、カテーテルを脚や腕の血管から心臓の血管(冠動脈)まで通して、冠動脈の狭くなっている部分(狭心症)や詰まっている部分(心筋梗塞)があるかなどを正確に把握することができます。治療が必要な方には、バルーンと呼ばれる特殊な風船やステントと呼ばれる金属の筒を冠動脈の病変に進め、狭くなった血管を広げ心臓の血流を改善させるカテーテル治療も行っております。緊急性のない患者さんに対しては、冠動脈CT検査または運動負荷試験を行い非侵襲的な検査にて評価を行います。突然死を引き起こす不整脈、症状が強い不整脈、心不全を引き起こす原因となる不整脈は適切な治療が必要となります。
その他にも様々な循環器疾患に対して診療を行っておりますので、ドキドキする、脈が飛ぶ、息切れ、めまい、胸が痛いなどの症状がある場合は、いつでもご相談ください。
循環器内科・心臓カテーテルセンター
呼吸器内科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 |
---|---|---|---|---|---|---|
040081xx99x0xx | 誤嚥性肺炎 | 123 | 13.9 | 21.1 | 30.9% | 86.3 |
040110xxxxx0xx | 間質性肺炎 | 14 | 14.9 | 18.6 | 28.6% | 78.4 |
110310xx99xxxx | 腎臓又は尿路の感染症 | 13 | 9.9 | 13.6 | 7.7% | 88.0 |
040040xx99040x | 肺の悪性腫瘍 | 12 | 6.2 | 8.6 | 0.0% | 75.0 |
040150xx99x0xx | 肺・縦隔の感染、膿瘍形成 | 12 | 17.3 | 22.7 | 16.7% | 77.8 |
呼吸器内科では肺炎を主に診療しており、症例数では誤嚥性肺炎が1位となっています。唾液や食べ物を誤嚥して起こる肺炎で、嚥下機能(飲み込む力)が低下した高齢者に多く見られます。上位5疾患の全て当院の平均在院日数は全国平均より短く、早期退院が可能です。それを可能にしているのが、下記のような多くの専門職の介入です。主治医に加え、感染制御チームが積極的にかかわり、抗菌薬の適正使用につとめています。リハビリ科には7名の言語聴覚士が在籍しており、嚥下障害に対し嚥下評価や嚥下訓練を積極的に行っています。また管理栄養士の介入により、患者さんの嚥下状態に適した食事を提供しています。とくに嚥下機能の回復が見込まれる患者さんには、医師・言語聴覚士・管理栄養士の多職種で構成された「摂食嚥下チーム」が介入し、嚥下機能回復をサポートします。
また退院先でも嚥下機能を維持していただくために当院の在宅部門である訪問介護事業所から介護施設へ指導に赴くなど、地域全体で誤嚥性肺炎のリスクを減らす取り組みを行っています。
転院率(他の病院に引き続き入院した割合)は誤嚥性肺炎の方が高い傾向にあります。これは、嚥下機能低下の一因となる認知症や脳卒中後遺症等の基礎疾患をもった高齢者が誤嚥性肺炎にかかりやすく、日常的に特別なケアが必要で自宅で生活することが難しい方が多いためです。
呼吸器内科
内科
DPCコード | DPC名称 | 患者数 | 平均 在院日数 (自院) |
平均 在院日数 (全国) |
転院率 | 平均年齢 |
---|---|---|---|---|---|---|
110310xx99xxxx | 腎臓又は尿路の感染症 | 25 | 11.6 | 13.6 | 24.0% | 82.7 |
040081xx99x0xx | 誤嚥性肺炎 | 15 | 14.9 | 21.1 | 26.7% | 82.5 |
161020xxxxx00x | 体温異常(熱中症) | - | - | 6.7 | - | - |
050130xx9900x0 | 心不全 | - | - | 17.5 | - | - |
060380xxxxx0xx | ウイルス性腸炎 | - | - | 5.7 | - | - |
1位の尿路感染症は、寝たきりの高齢者に多く見られる感染症で、尿路に細菌が入り炎症を引き起こす疾患です。(膀胱炎・腎盂腎炎)
2位の誤嚥性肺炎は、唾液や食べ物を誤嚥して起こる肺炎で、嚥下機能(飲み込む力)が低下した高齢者に多く見られます。どちらも高齢化が進むにつれて急増している疾患で、繰り返しやすく、重症化して敗血症などを引き起こすこともあります。
尿路感染症の治療については、当院は泌尿器科がないため主に抗生剤投与にて治療を行います。尿管ステントなど専門的な処置が必要になった際は、連携する地域の泌尿器科医が対診を行い、治療にあたっております。誤嚥性肺炎には、嚥下障害に対し嚥下評価や嚥下訓練を積極的に行っています。嚥下訓練により、食べるために必要な筋肉を動かしたり刺激させたりして食事による誤嚥リスクの軽減に務めています。また管理栄養士の介入により、患者さんの嚥下状態に適した食事を提供しています。
医師、感染管理認定看護師など他職種で構成された「感染制御チーム」が積極的にかかわることで、抗菌薬の適正使用につとめています。
初発の5大癌のUICC病期分類別並びに再発患者数
初発 | 再発 | 病期分類 基準(※) |
版数 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Stage I | Stage II | Stage III | Stage IV | 不明 | ||||
胃癌 | 23 | - | - | - | - | - | 1 | 第8版 |
大腸癌 | - | - | 13 | - | - | - | 1 | 第8版 |
乳癌 | - | - | - | - | - | - | 1 | 第8版 |
肺癌 | - | - | - | 22 | - | - | 1 | 第8版 |
肝癌 | - | - | - | - | - | - | 1 | 第8版 |
※ 1:UICC TNM分類,2:癌取扱い規約
現在、日本で罹患数の多い5つのがんのStage別患者数です。(延数)Stage(病期)とは、がんの進行具合を表すものです。StageⅠからStageⅣへと進むにつれ進行していきます。当院が、StageⅠとⅣが多くなっている理由は、早期発見、早期治療に力を入れているのと、緩和ケア病棟(ホスピス)を有しているためです。
当院では、早期発見、早期治療の取り組みとして、対象患者への便潜血キット配布や内視鏡検査、肺CT検査、健康診断の推進を行っております。胃・大腸の早期がんの場合、内視鏡的治療など低侵襲の治療で根治が期待できます。
緩和ケアとは、重い病を抱える患者さんや家族の痛み、つらさを和らげ、より豊かな人生を送ることが出来るように支えていくケアのことです。大切な時間をより良く過ごせるようサポートしています。
嶋田病院は、この地域から進行した胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんの患者さんを出さないことを目指して活動しております。乳がんの検査で使用するマンモグラフィーの装置は、2019年に最新の機械を導入し、高精細な画質のため微小な石灰化の形状、腫瘤(しこり)やその他の変部の観察が可能となりました。高性能に加えて痛みも軽減されています。2023年9月に特定非営利活動法人日本乳がん検診精度管理中央機構より「マンモグラフィ検診施設・画像認定施設」に認定されました。マンモグラフィ検診の精度を高め、維持するために撮影装置や撮影技術、撮影に要したエックス線の量などを評価し、質が高いと評価した施設に与えられる認定です。今後も、質の高いマンモグラフィ検診の提供を行っていきます。
5大癌以外にも、子宮頸癌や前立腺癌の健康診断も行っておりますので、気軽にご相談ください。小郡市で実施中の「胃がん検診」、「大腸がん検診」も併せてご利用ください。(当院で検査を受けることができます。お問い合わせください。
消化器内科・内視鏡センター
健診センターAQUA
緩和ケア病棟
成人市中肺炎の重症度別患者数等
患者数 | 平均 在院日数 |
平均年齢 | |
---|---|---|---|
軽症 | 13 | 7.8 | 74.3 |
中等症 | 20 | 13.4 | 80.1 |
重症 | - | - | - |
超重症 | - | - | - |
不明 | - | - | - |
市中肺炎とは、入院中や施設入所中などを除き、一般の社会生活をおくっている人に起こる肺炎のことです。市中肺炎ガイドラインによる重症度分類システムを用いています。重症度は5つの因子(年齢、血圧等)の該当数により分類され、重症度別に適切な治療の場が設定されています。
・軽症:外来治療
・中等症:外来または入院
・重症:入院治療(2022年度は2名の方がおられました)
・超重症:ICU入院(2022年度は4名の方がおられました)
当院に入院された市中肺炎の患者さんは、中等症(外来または入院で治療する)が多くいらっしゃいます。このような患者さんに対し当院では医師、感染管理認定看護師、薬剤師が積極的にかかわり、痰の検査(染色、培養、薬剤感受性)結果を基に、炎症の原因になった菌に効果が高い薬剤を選択する等、抗菌薬の適正使用につとめています。
脳梗塞の患者数
発症日から | 患者数 | 平均在院日数 | 平均年齢 | 転院率 |
---|---|---|---|---|
3日以内 | 188 | 41.0 | 79.2 | 17.0% |
その他 | 17 | 41.8 | 76.9 | 11.8% |
脳梗塞とは、脳を栄養する動脈の閉塞、または狭窄のため脳虚血をきたし、脳組織が壊死または壊死に近い状態になることを言います。ここでは、脳梗塞の患者数、平均在院日数、平均年齢、転院率を見ています。「発症時期」は発症から「3日以内」の症例と、「その他」にわけて集計しています。「その他」には発症から4日以上が経過している患者さんが分類されています。当院は脳神経内科の専門医が2名おり、夜間や休日でも専門的な診断、治療ができる体制を整えているため、発症3日以内の患者さんがほとんどです。脳梗塞の治療は「タイムイズブレイン」と言われるほど時間との勝負です。脳機能の損失は、時間に関係しています。発症後4.5時間以内であれば、当院でrt-PA(血栓溶解治療)も可能です。このような急性期の治療を終えた後、回復期リハビリテーション病棟で日常生活に戻れるようにリハビリを行います。
脳神経内科
入院におけるリハビリテーション
診療科別主要手術別患者数等(診療科別患者数上位5位まで)
消化器外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 |
---|---|---|---|---|---|---|
K672-2 | 腹腔鏡下胆嚢摘出術 | 51 | 0.4 | 4.8 | 3.9% | 62.6 |
K634 | 腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術(両側) | 40 | 0.0 | 1.2 | 0.0% | 71.5 |
K718-22 | 腹腔鏡下虫垂切除術(虫垂周囲膿瘍を伴うもの) | 14 | 0.6 | 6.0 | 0.0% | 47.5 |
K719-3 | 腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術 | 11 | 4.2 | 8.5 | 0.0% | 77.4 |
K718-21 | 腹腔鏡下虫垂切除術(虫垂周囲膿瘍を伴わないもの) | 11 | 0.5 | 3.3 | 0.0% | 39.6 |
1位は胆のう炎等に対し腹腔鏡で胆のうを摘出した手術、2位は鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡手術です。消化器外科では 「体にやさしく快適な治療」を心がけ、腹腔鏡による手術を標準治療としています。腹腔鏡は、お腹に数カ所の穴をあけ、そこから手術器具を入れて手術をするものです。開腹手術に比べて傷が小さいため、患者さんの体の負担も少なく、術後の回復が早いのが最大の特徴です。
当院は、術前・術後日数が全国平均と比較してとても短く、患者様にとっては「入院前の生活自立度を落とさず早期に社会復帰できる」というメリットがあります。医師および手術室スタッフのオンコール体制も整えており、患者さんにいつでも安心して手術を受けて頂くことが可能です。
消化器外科
血管外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 |
---|---|---|---|---|---|---|
K617-4 | 下肢静脈瘤血管内焼灼術 | 23 | 0.3 | 1.5 | 0.0% | 66.7 |
K653-3 | 内視鏡的食道及び胃内異物摘出術 | - | - | - | - | - |
K386 | 気管切開術 | - | - | - | - | - |
K672-2 | 腹腔鏡下胆嚢摘出術 | - | - | - | - | - |
K664 | 胃瘻造設術(経皮的内視鏡下胃瘻造設術、腹腔鏡下胃瘻造設術を含む) | - | - | - | - | - |
血管外科では、下肢静脈瘤手術を主に行っております。下肢静脈瘤手術の多くは、レーザーや高周波による血管内焼灼術を行っており、併せて静脈瘤を小さな傷から取り出す切除術を行っています。麻酔科医の管理のもと、痛みの少なく安全な麻酔で手術を受けて頂けます。
日帰り手術を基本としており、2022年度は外来にて111件の下肢静脈瘤手術を実施しました。(表は入院での実施件数を集計しています。)
2023年度より、静脈内に医療用接着剤を注入する「下肢静脈瘤血管内塞栓術」も可能になりました。レーザーによる血管内焼灼術との違いは、熱による組織の損傷の危険性がありません。そのため、術後の弾性ストッキング(下肢の圧迫)の必要なく、手術直後より仕事も可能になります。静脈瘤の状態等によっては出来ない場合もありますので医師へご相談ください。
血管外科
整形外科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 |
---|---|---|---|---|---|---|
K0461 | 骨折観血的手術(大腿)(上腕) | 89 | 1.4 | 48.4 | 15.7% | 84.4 |
K0732 | 関節内骨折観血的手術(手)(足) | 24 | 0.6 | 2.0 | 0.0% | 78.6 |
K0811 | 人工骨頭挿入術(股) | 24 | 3.1 | 44.9 | 20.8% | 84.6 |
K0462 | 骨折観血的手術(下腿)(前腕) | 11 | 1.4 | 14.4 | 18.2% | 60.9 |
K0483 | 骨内異物(挿入物を含む)除去術(下腿)(前腕) | - | - | - | - | - |
整形外科では、手術症例数の1位、3位は大腿骨近位部骨折に対して行う手術です。2位は、手の関節内骨折に対して行う手術です。当院では、受傷後なるべく、短期間で手術が行えるようにしています。また、他の診療科と比較すると平均術後日数が長くなっていますが、これは急性期病棟~回復期病棟を含めた日数のためです。大腿骨近位部骨折では術後3週間程度で回復期リハビリテーション病棟に転棟します。
当院の回復期リハビリテーション病棟では、多職種が1つのチームとなって連携し、患者さんの「日常生活能力の向上」を支援します。患者さんが一日も早く元の生活に戻れるよう、集中的なリハビリテーションを提供しています。
回復期リハビリテーション病棟
消化器内科
Kコード | 名称 | 患者数 | 平均 術前日数 |
平均 術後日数 |
転院率 | 平均年齢 |
---|---|---|---|---|---|---|
K688 | 内視鏡的胆道ステント留置術 | 39 | 2.1 | 3.5 | 5.1% | 78.5 |
K6532 | 内視鏡的胃、十二指腸ポリープ・粘膜切除術(早期悪性腫瘍胃粘膜下層剥離術) | 27 | 0.0 | 5.0 | 0.0% | 71.4 |
K6852 | 内視鏡的胆道結石除去術 | 21 | 0.0 | 1.7 | 0.0% | 79.1 |
K654 | 内視鏡的消化管止血術 | 15 | 0.7 | 7.3 | 20.0% | 74.9 |
K721-4 | 早期悪性腫瘍大腸粘膜下層剥離術 | 13 | 0.8 | 3.3 | 7.7% | 68.5 |
1位は総胆管内の結石や悪性腫瘍による胆道閉塞に対して内視鏡を用いて胆管内にステントを留置して胆汁の流れを回復する治療です。胆汁がうっ滞すると黄疸が生じ、胆汁の逆流によって感染が生じると(胆管炎)、重篤な感染症に移行するため非常に緊急性の高い治療です。3位の胆道結石除去術も併せ、胆膵内視鏡治療(ERCP)は内視鏡センター全体では年間約100件行っております。
2位は早期胃癌に対する内視鏡治療、5位は早期の大腸癌(及び一部の内分泌腫瘍)に対する内視鏡治療で、癌を高周波ナイフを用いて削りとって切除する治療です。非常に高度の技術を要する治療ですが、当院では癌の早期発見・治療に取り組んだ結果、ここ数年治療件数が飛躍的に増加してきております(2021年度は25件、2022年度は46件、2023年度は70件を超える見込み)。
4位は消化管の出血に対して内視鏡で止血を行った件数です。ピロリ菌に対する除菌治療の普及で胃十二指腸潰瘍の頻度は減ってきて
いますが、狭心症や脳梗塞など血栓性疾患に対する治療によって出血が助長されることがあり、治療が遅れれば致命的となることもあるため
緊急性の高い疾患です。
当院の内視鏡センターでは専門性の高い治療に対してもより少ない侵襲で安全かつ確実に遂行できるよう努めており、定期的なカンファレンス
を行い検査の質の向上に努めています。
消化器内科
内視鏡センター
その他(DIC、敗血症、その他の真菌症および手術・術後の合併症の発生率)
DPC | 傷病名 | 入院契機 | 症例数 | 発生率 |
---|---|---|---|---|
130100 | 播種性血管内凝固症候群 | 同一 | - | - |
異なる | - | - | ||
180010 | 敗血症 | 同一 | 22 | 0.7% |
異なる | - | - | ||
180035 | その他の真菌感染症 | 同一 | - | - |
異なる | - | - | ||
180040 | 手術・処置等の合併症 | 同一 | - | - |
異なる | - | - |
こちらの指標は、2022年度に退院した患者さんのうち、主に治療をした疾患が、1.播種性血管内凝固症候群、2.敗血症、3.その他の真菌感染症、4.手術・処置等の合併症である患者さんの件数と、発生率を表しています。
「同一」とは入院した時からこの状態だったもの、「異なる」とは入院した後にこの状態になった事を表しています。臨床上、ゼロにすることはできませんが、医療の質の改善のため、入院後に重篤な状態になることは少しでも減らしていかなければなりません。
当院には、医療の質改善に取り組むTQM(Total Quality Management)委員会があります。病院長、医療安全管理、感染管理、褥瘡管理、栄養管理、クリニカル・パスの各担当者が中心となり、病院全体の質改善活動を中心的に行っています。
【疾患について】
播種性血管内凝固症候群
•様々な基礎疾患が原因で、血液の凝固反応が活性化し、全身の毛細血管に血のかたまり(血栓)が多発します。
•その血栓によって血流に障害が生じ、腎臓や肺、脳などの多くの臓器に障害が起き、組織が壊死します。進行すると、多臓器不全で死に至る危険性もあります。
敗血症
•感染を引き金とした全身性炎症反応症候群です。血流に入った病原体(主に細菌)が免疫によって排除できず、全身に炎症が広がります。
その他の真菌感染症
•真菌というのは、酵母やカビと言われるものです。これらは小さな胞子をまき散らし、繁殖します。
•薬や病気による免疫機能低下があると、重症化することがあります。
手術・処置等の合併症
•手術や検査、処置が原因となって、起こる病気の事です。
•合併症というのは、必ず起こるわけでもありませんが、どんな手術、処置でも起こる可能性はあります。
更新履歴
- 2023.9.26
- 2022年度病院情報の公表を公開